徳島新聞 女性クラブ

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お知らせ

2017年5月15日月曜日

5/7 奥田瑛二トークショー 開催レポート

 徳島市のアスティとくしまで開かれた女性向け会員サービス「徳島新聞女性クラブ」のトークショーは、俳優で映画監督の奥田瑛二さん(67)が登場。映画やテレビドラマに出演する俳優業、50歳から取り組む映画監督の活動について「何をするのも命懸け」との信念を語った。家族や人との関わり方についても独自の世界観を披露した。要旨は次の通り。(橋本真味)
 
映画の仕事や家族との
エピソードを語る奥田さん
=アスティとくしま

仕事も子育ても命懸け
優しさ内包したい


 小学5年の時、映画館で大友柳太朗主演の「丹下左膳」を見て衝撃を受けた。「スクリーンの中に入りたい」と映画俳優を志す。しかし、俳優としてはなかなか芽が出ず、29歳でホームレス生活を送った。妻(エッセイストの安藤和津さん)との出会いはその頃。よく出会えたものだと、不思議に思っている。
 映画が大好きで「人生は映画だ」と思っていた。ただ映画俳優になりたいという一念で進んだ。にもかかわらず、映画「棒の哀しみ」で主演男優賞をもらった際、力が抜けてしまった。「本当に演技を追求する精神があるのか」と自問する自分がいた。
 映画監督としてなら生きていけると思い、迷うことなく10年で5本撮った。映画を撮る時は俳優はやらないと決めた。だが、今は両者のスイッチを自然に切り替えながら取り組めるようになった。俳優の奥深さや素晴らしさをさらに強く感じている。
 映画監督と俳優になった2人の娘には「何事も命懸けだよな」という話をする。死ぬか生きるかの冒険心で精進し、命懸けという意識まで自分を高めないといけない。疲れたら休めばいい。映画製作は、準備や日々の作業でつらい出来事の方が多い。見た人に「良かった」と言われて、初めて楽しくなる。苦労がないと楽しみは生まれない。仕事だけでなく、人を愛するのも、子どもを育てるのも命懸けでないと。
 家族についてはこう考える。「一番愛すべきものだが、この世で一番切ない」。自分の一方的な愛でも、相手からもらうだけの愛でもいけない。多くが同調しないとうまくいかない。家族という形式はあっても、心の実態がなくて切なかった。娘が成長して孫ができ、一瞬にして切なさが楽しさに変わった。切なさを乗り越えたから、その瞬間が訪れた。
 家族に限らず人が好きで、人との関係を大切にしたいと思っている。手を取り合って歩むのではなく、優しさを心に内包していたい。そんな思いで、おっくうがらず義母の介護に関わることができた。信念と行動が伴い、一人間として、成立できたような思いがしている。